「再現性のある」作文を書く(想像作文)    
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4年2組学級だより                  1998年  月  日( )
 学級だより           No.      名瀬市立奄美小学校 
           
 「思い浮かべ方」の練習をする〜「再現性のある作文」を書く            
           
◇ 突然ですが,次の質問にお付き合いください。                  





問1 あなたは作文を書くことが好きですか。                  
                                       
   @ 好き  A 好きではない。                     




  このように聞かれたら,どちらに答える人が多いでしょう。            
  おそらくAの「好きではない」と答える人の方が多いでしょう。          
  これは,子どもたちにもそっくり当てはまります。いや,この傾向は大人以上だと思い
 ます。                                     
  なぜこうなのか。なぜ,文を書くことが好きではないのか。この理由を聞くと,次のよ
 うなものが出てきます。                             






@ 何を書けばいいのか分からない。(難しい。)                
A どう書けばいいのか分からない。(うなく書けない。)            
B よく思い出せない。                            
C 面倒くさい。                               





  さて,このような現状に対して,教師は何らかの策を立てねばなりません。子どもたち
 から,このような「抵抗」を取り除かねばなりません。               
                                         
◇ 以下に紹介するのは,このような子どもの「抵抗」を少しでも取り除くために考えた授
 業実践です。国語の「『動物園の中のこと』を作文に書く」という単元のものです。  
  この「学習」が始まってから,次のような声が聞かれるようになりました。     




「先生,何か作文を書くのが好きになってきた。」                
「こんな作文の書き方だったらおもしろい。」                  



  以下に紹介します。                              

◇ 「動物園の中のこと」を作文に書くことを告げ,すぐに次のように言った。     








指示 全員,目を閉じなさい。                         
   今から,先生が言うことを頭の中に思い浮かべてください。テレビの画面のよう
  に思い浮かべてください。                         








説明 今,あなたは動物園の入口に来ています。                 
   今から中に入ろうする,その入口に来ています。              



問い さて,今何が見えてくるでしょう。                    
指示 できるだけたくさん思い浮かべてごらんなさい。              


  10秒程待った。そして,列指名で「何が見えたのか」を聞いていった。子どもたちか
 ら出たものは以下の通り。(2列を指名し,その後「まだある人?」と聞いて全部の意見
 を出させた。)                                 







@ 切符売場            E 切符売場の人             
A 入口の柵            F お客さん               
B 「大人何百円,子ども何百円」の言葉や数字   G 入口の柵にあるチェ−ン        
C きりん             H お客さんの列             
D 自分が持っている切符                           






  再度目を閉じさせ聞いた。                           






説明 さて,中に入り,どんどん歩いて今あなたは「さる」のおりの前に来ています。
   今,あなたは,おりの中の「さる」を見ています。             
問い さるは今,どうしてますか。                       
指示 しばらく思い浮かべてごらん。                      





  これも列指名で聞き,「おりにつかまってこっちを見ている。」「木から木へ飛び移っ
 ている。」などが出された                            
  以上,子どもたちは私の「指示」や「問いかけ」により,「動物園の中の様子」を映像
 として思い浮かべることができた。さらに友達の意見を聞きながら,自分の描いた「映像
 」をより鮮明にしていった。                           
  しかし,全て視覚的な「映像」ばかりである。これに,聴覚的なものも付け加えさせた
 い。次のように言った。                             






説明 それを見ているあなたには,いろんな音やしゃべっている声が聞こえてきます。
   おりの前には,他のお客さんも来ています。                
問い さて,どんな音が聞こえますか。また,何と言っている声が聞こえますか。  
指示 しばらく思い浮かべてください。                     





  子どもたちから出された意見は,次の通り。                   









@ 「ガッシャン,ガッシャン」と,サルが柵をゆする音。            
A 「キ−,キ−。」と鳴いているサルの声                   
B 「ギャ−,ギャ−。」とけんかをする二匹にさるの声             
C 「このサル,とてもかわいい。」                      
D 「このサル,鼻がおもしろい。」                      
E 「こっちをじいっと見ている。」                      
F 「向こう向いて寝てる。」                         








  その後,思い浮かべる場所を「ぞうのおりの前」に変え,「さる」のときと同様に「ぞ
 うのしていること」「そこで聞こえた音や声」の順に聞いていった。         

4年2組学級だより                  1998年  月  日( )
 学級だより           No.      名瀬市立奄美小学校 
  「さる」のときと同じように,その場で実際に見ているような,聞いているような意見
 がたくさん出された。                              
  さて,以上で終わったのではもったいない。私が書かせたいのは,動物園の中のことを
 題材にした「お話」である。「お話」では,途中で何か事件が起こった方が面白い。ある
 事が起きた方が読む者を引き付ける。「起承転結」で言う「転」の部分であった方がよい
  そこで,次のように言った。                          





説明 ところが,そのゾウさんのおりの前で,あることが起きます。ある「事件」が起
  きるのです。                               
指示 さあ,みなさんであることを起こしてください。事件を起こしてください。  




  しばらく考えさせた後に,出た意見が次のものである。              







@ ゾウさんが,おりをこわして外に逃げた。                  
A 二匹のゾウがお互いでけんかを始めた。                   
B 二匹のゾウがえさの取り合いを始めた。                   
C ものすごい大きさのうんこをした。                     
D 鼻で吸い込んだ水を子どもに向かってかけた。                






◇ 以上のように,指定された場所を「思い浮かべる」練習をした。テレビの画面のように
 「映像」にして思い浮かべる練習を繰り返し,繰り返し行った。           
  すると,子どもたちから,その場で実際に見ているような,聞いているような「再現性
 」の高い意見が出された。                            
  あとは,それをもとにひとつの「話」に仕立てていくだけである。書く場所をひとつに
 絞って話に「展開」を持たせるだけである。                    
  子どもたちには次のように言った。                       













説明 さて,今やってきたようなやり方で,書きたい場所をテレビの画面のように思い
  浮かべて作文を書いていきます。                      
   次のようにします。                           












 
 
 
 
 
 
 
 

@ 書く場所をひとつに決める。(例「さるのおりの前」)         
A テレビの画面のように思い浮かべる。                 
B じっきょうちゅうけいをする「レポ−タ−」になったつもりで書く。   
  (その場で見ているような書き方にする。)              
C 見えてきたモノやこと,聞こえてきた音や声を書く。          
D 事けんを起こす。あることを起こす。                 







◇ この「学習」は,「思い浮かべ方」の練習をすることで,書くことの抵抗が少しでもな
 くなればと願って行ったものである。書きたいこと,あるいは書きたい場面が,はっきり

 イメ−ジできれば,その「映像」を後は説明すればいいだけである。         
  しかし,その説明が難しいという子どももいるだろう。そこで,その手助けになるのが
 「実況中継しているレポ−タ−になったつもりで書きなさい。」という指示である。  
  目の前で起きていること・目の前にあるモノというのは説明がしやすい。それは,実物
 を見ながら言えるし,説明の材料そのモノが目の前にあるからである。        
  そして,そのことを説明するとき,伝えるとき,そのときまさに「実況中継をしている
 レポ−タ−」のような言い方になる。                       
                                         
◇ 先に述べた子どもの「抵抗」,                         





@ 何を書けばいいか分からない。(書く材料や題材)              
A どう書けばいいか分からない。(表現の仕方,文章の構成の仕方)       
B よく思い出せない。(材料となる「生活経験」の思い浮かべ方)        




 を取り除くために行ったのが本授業であった。                   
                                         
◇ 以下に,この授業の流れを短くまとめた。                    



























 思い浮かべ方の指示                            
 指示 目を閉じなさい。                           
    今から先生が言うことを,テレビの画面のように思い浮かべなさい。    
                                       
 「動物園の入口」を思い浮かべる                      
 説明 今,「動物園の入口」に来ています。                  
 発問 さて,何が見えてきますか。                      
 指示 できるだけ多く思い浮かべてごらん。                  
                                       
 「さるのおりの前」を思い浮かべる                     
 説明 「さるのおりの前」に来ています。今あなたはおりの中のさるを見ています。
 発問 さるは今どうしてますか。                       
 指示 しばらく思い浮かべてごらん。                     
 説明 それを見ていると,いろんな音やしゃべっている声が聞こえてきます。   
    他のお客さんも来ています。                      
 発問 どんな音が聞こえますか。また,何と言っている声が聞こえますか。    
 指示 しばらく思い浮かべてごらん。                     
                                       
 「ぞうさんのおりの前」を思い浮かべる。                  
 説明 今度は,「ぞうさんのおり」のところに来ました。            
 発問 ぞうさんは今どうしてますか。                     
 発問 どんな音が聞こえますか。また,何と言っている声が聞こえますか。    
 説明 そこで,あることが起きます。                     
 指示 そのことを自分で考えてください。                   
    そして,それをしばらく思い浮かべてください。